街のイルミネーションは明るく、この聖夜を迎える人々の気持ちを上向きにさせる。光があれば、闇も生まれ、この日は気持ちが下がる人も少なからずいた。
その少ないうちの一人が、僕こと栗須聖夜だ。親がクリスマスに生まれたというのが理由らしい。小さい頃から誕生日とクリスマスプレゼントが一緒だったのもあり、人よりは間違いなく損をしている。そんな日がやって来た。彼女がいるわけもなく、かといって大学の友人たちは地元に帰ったりバイトしたり、就活で忙しいし。仕方ないから近くのコンビニでケーキを買った。何だか悲しくなった。
もう何もする事が無いので、寝ようとしたところで、玄関のチャイムが鳴った。こんな時間に誰だよ、と思いながらも扉を開けた。そこには、小学4年生くらいの中性的な子供が立っていた。
「えっと、家、間違えてるよ。」
「ううん。あってるよ。お兄ちゃんに会いに来たの。」
「僕には兄弟はいないんだけど…」
「そういう意味じゃないんだけど、まぁ、いいか。セントニコラウスのじーちゃんがお兄ちゃんに用があるんだって。だから、迎えに来たんだ。」
「えっと、セント…何?」
「セントニコラウス。お兄ちゃんは数少ない中から選ばれたんだって。とにかく、ついてきて。」
言われるがまま、僕はついていった。
そこは安いアパートの一室だった。中には、赤い服を着た髭をはやしたおじいさんがいた。
「待っておったよ。ふむ、体格はやせ形か…まぁ、問題ないか。」
「あの…どういうことでしょうか?」
「実はのぉ、わしはもう老い先長くない。そこで、わしがしておるサンタクロースの仕事をお主にやってもらいたい。どうかのぉ。」「ひとつ良いですか。なんで面識のない僕なんですか?」
「面識はあるよ。君が確か8歳の頃、クリスマスの願い事にサンタにして欲しいと頼んでたろ?その時、お返事で、20歳越えたらと書いてあったはずじゃ。」
確かに僕は昔書いた。何故このおじいさんが知っているのか、気になった。が、同時にサンタクロースだから知っているのかと妙な納得をしてしまった。
「で、具体的には何をすればいいんですか?」
「わしのもとで修行してもらう。今、就活中じゃろ?就職先をサンタにすればいい。何も問題ない。給料もある。そこにいる子も手伝う。どうじゃ?」
「…世界中に配るのですか?どうやって欲しいものを手に入れるんですか?」
「サンタ用の袋があっての、この中から自動的に出てくるんじゃ。世界中回るのもたいへんじゃが、そこはてわけして配れば意外とはやく終わるよ。」
本当にサンタかわからないまま、僕は見習いとして、働くことになった。
数年後、あまり好きではなかったクリスマスが楽しみになった。サンタとして子供たちに夢を与えることになったからだ。
すいません。時間がないのと、睡魔に襲われて、微妙な話になりました。これでクリスマス企画は終了です。お付き合いありがとうございました。
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